日本株式市場におけるLinux関連企業の投資機会分析

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Linux の普及拡大は、クラウドコンピューティング、IoT デバイス、エッジコンピューティングの成長とともに加速しており、この技術トレンドを収益機会として活用する日本の上場企業が注目を集めている。本レポートでは、Linux 事業を展開する主要な日本上場企業の事業戦略、財務状況、投資価値を総合的に分析し、投資家にとって有益な投資判断材料を提供する。

Linux市場の成長ドライバーと投資環境
1. 市場拡大の背景
2. 投資テーマとしてのLinux関連銘柄
主要Linux関連上場企業の事業分析
大手企業のLinux事業展開
新規上場企業の動向
1. 株式会社デージーネット（証券コード：371A、TOKYO PRO Market）
Linux市場における海外企業の影響
1. Akamaiによるkernel.orgサポート
投資戦略と推奨銘柄
結論

Linux市場の成長ドライバーと投資環境

市場拡大の背景

Linux オペレーティングシステムは、世界で最も広く導入されているオープンソースソフトウェアとして、スマートフォン、産業用デバイス、コンシューマー製品、クラウドコンピューティングデータセンターで活用されている3。特に、インターネットの大部分、世界の上位500のスーパーコンピューターすべて、および世界中の証券取引所で稼働している3。2005年以降、1,300以上の企業から13,500人以上の開発者がLinuxカーネルの開発に参加しており、約2,800万行の膨大なコードベースを維持している3。

国内市場においても、Linux の企業システムへの採用が急速に進んでいる。産業分野におけるクラウド活用IoTシステムや組込み装置へのLinux活用は年々増加しており、特に英Canonical社が開発するUbuntuに対する需要は加速度的に高まっている6 14。その背景として、明確なロードマップ、クラウドシステムへの接続性、定期的かつ長期的なバージョンアップとセキュリティアップデート、AIやROSなど最新のテクノロジーに対する率先したサポートが挙げられる6。

投資テーマとしてのLinux関連銘柄

株式市場において、Linux関連企業は重要な投資テーマとして位置づけられている。現在、日本の株式市場では9銘柄がLinux関連テーマとして分類されており、これらの企業は多様なビジネスモデルでLinuxの普及を収益機会として活用している13。これらの企業は、従来のハードウェア販売から、クラウドサービス、サポート事業、システムインテグレーションまで幅広い事業領域をカバーしている。

主要Linux関連上場企業の事業分析

サイバートラスト株式会社（証券コード：4498、東証グロース）

サイバートラストは国内唯一の企業向けLinuxディストリビューターとして、MIRACLE LINUXを提供している1。同社は、日本初の商用電子認証局として2000年より提供している認証・セキュリティ技術を活用したトラストサービスと、Linuxのカーネル技術やオープンソースソフトウェアの知見を応用したプラットフォームサービスを展開している11。

2025年3月31日現在、同社の資本金は836百万円で、東京証券取引所グロース市場に上場している11。MIRACLE LINUXは、RHEL/CentOSのアプリケーションと互換性があり、ライセンス無償の国産Linux OSとして提供されており、希望の企業向けには有償のサポートサービスを用意している1。従来のCentOSの利便性を維持しながらMIRACLE LINUXの安全性と信頼性により、長期継続利用可能なLinuxシステム環境を提供している1。

株価は2,658円（2025年6月4日現在）で、PER22.1倍、PBR3.26倍、配当利回り0.87%となっている13。同社は組込み市場からクラウド環境まで幅広い領域でLinux製品を展開しており、社会インフラをはじめとする産業用途に最適なLinux OSを提供している1。

SRAホールディングス株式会社（証券コード：3817、東証プライム）

SRAホールディングスは、Linux、PostgreSQLを中心としたオープンソースソフトウェアのサポートを手がける企業である2。同社は2022年12月にアドバンテック株式会社と業務提携を締結し、Ubuntu OSに関する日本国内での組込みサービス・サポートを強化している6 14。

同社の株価は4,570円で、PER11.8倍、PBR1.87倍、配当利回り3.94%と、比較的安定した財務指標を示している13。SRAは、オープンソースソフトウェアの製品提供と受託開発において、エンタープライズ分野と組込み分野両面での長年の実績を持つ国内有数の技術系システムインテグレーターとして位置づけられている6。

Canonical社Ubuntuについては、各種システムインテグレーション・サポートに関してCanonical社とパートナー契約を締結し、日本語でのサポートサービスを提供している6。この業務提携により、Ubuntuを組込み環境で利用する企業に対して、最長10年間のセキュリティ対応、OSとハードウェアの一元的なサポート、組込みからクラウドまでの広範にわたる最新のテクノロジーの利用を可能としている6。

ぷらっとホーム株式会社（証券コード：6836、東証スタンダード）

ぷらっとホームは、マイクロサーバーの開発製造大手企業として、1993年の創業よりLinuxサーバーのパイオニアとして事業を展開している15。同社のOpenBlocks®シリーズは累計14万台以上販売しているマイクロサーバーのデファクトスタンダード製品である7。

株価は1,115円で、PER440倍という高い水準にあるが、これは成長期の技術企業によく見られる特徴である13。同社のマイクロサーバー「OpenBlocks IX9」には、Linux FoundationのプロジェクトCIP（Civil Infrastructure Platform）によって提供されている超長期サポート版のLinuxカーネルを採用している7。通常のDebian GNU/Linuxは原則最長5年間でサポートを終えるが、超長期サポート版は10年を超えるサポートを提供しており、社会インフラや産業用途など、長期にわたって脆弱性対策が重要な用途でも安心して利用可能である7。

2016年には、Linux Foundationへの加入およびLinux Foundationが新設したプロジェクト「Civil Infrastructure Platform」へ設立メンバーとして参加している15。これにより、社会インフラシステムを実現するうえで必要となるオープンソース・ソフトウェアの各種基盤技術の確立に貢献している15。

アクセス株式会社（証券コード：4813、東証プライム）

アクセスは、Linux向けアプリケーション・フレームワークをオープンソース化するなど、モバイルLinux市場の拡大に貢献している企業である8。同社のアプリケーション・フレームワークは、ACCESS Linux Platformの一部として開発され、アプリケーションのインストール・管理機能や、アプリケーション間の通信機能を提供している8。

株価は842円で、PBR1.36倍となっているが、現在は赤字状態にある13。同社は携帯市場および組込み機器市場向けに最適化されたオープンソースコンポーネントの開発に注力している8。Linux Kernelを拡張するセキュリティ機能をGPL（General Public License）v2に基づいてオープンソース化するなど、Linux エコシステム全体への貢献を行っている8。

大手企業のLinux事業展開

富士通株式会社（証券コード：6702、東証プライム）

富士通は、Linux関連テーマの銘柄として分類されており、同社の包括的なITサービスポートフォリオの中でLinux関連ソリューションを提供している13。株価は3,379円で、PER15.4倍、PBR3.45倍、配当利回り0.89%と安定した財務指標を示している13。

日立製作所のLinux事業強化

日立製作所は、2024年9月26日に国内初となるパブリッククラウドにおけるRed Hat Enterprise Linux長期保守サービスと独自のLinux高信頼化サービスの提供を開始した12。これにより、プラットフォーム製品の保守をワンストップで行う「日立サポート360」において、パブリッククラウド上のRHELを従来の2年から最長6年まで同一バージョンで利用できるサービスを提供している12。

日立がオンプレミスで培った独自のLinux高信頼化技術を活用し、障害が発生した際にプラットフォームエンジニアが原因の特定を支援するサービスも新たにパブリッククラウド向けに提供している12。このような基幹システムのモダナイズにおける課題解決により、企業の持続的な成長に貢献している12。

サイオステクノロジー（証券コード：3744、東証スタンダード）

サイオステクノロジーは、Red Hat Enterprise Linux（RHEL）の販売において、レッドハットのパートナーとして10年以上の実績を持ち、アジア・パシフィックでの販売実績No.1の企業である9。株価は359円で、PER31.1倍、PBR2.14倍となっている13。

同社は、お客様のデスクトップ環境からミッションクリティカルシステム、仮想化のプラットフォームまで、RHELを安心して導入していただくための専門的なノウハウおよびサービスを提供している9。購入更新支援サービス、サブスクリプション期間調整、Red Hat Satelliteなど各種関連サービスを提供している9。

新規上場企業の動向

株式会社デージーネット（証券コード：371A、TOKYO PRO Market）

デージーネットは、2025年6月26日にTOKYO PRO Market上場を予定している新規上場企業である4。同社は「よりよい技術で、インターネット社会の安心と便利に貢献します」という事業理念のもと、オープンソースソフトウェアを活用したシステムの設計・構築から運用・メンテナンスまでを提供している4。

2024年12月期の売上高は455百万円、経常利益は18百万円となっており、Linux関連市場における中小規模企業として注目される4。同社の上場により、Linux関連企業の多様化がさらに進むことが期待される4。

Linux市場における海外企業の影響

Akamaiによるkernel.orgサポート

2025年4月には、Akamai TechnologiesがLinux カーネル開発作業のパートナーとなる新たなインフラを提供することが発表された3。同社のクラウド・コンピューティング・サービスとコンテンツ・デリバリー・ネットワーク（CDN）は、kernel.orgを支援し、グローバル開発者ネットワークの主要な調整の場として機能している3。

AkamaiはThe Linux Kernel Organizationと数年間の契約を締結し、プロジェクトとグローバルな開発者集団にインフラサービスを提供している3。これにより、世界で最も広く導入されているオープンソース・ソフトウェアであるLinuxの保護に貢献し、日本のLinux関連企業にとっても安定した開発環境の継続が期待される3。

投資戦略と推奨銘柄

安定収益型企業への投資

Linux関連投資において最も安定した収益を期待できるのは、確立されたビジネスモデルと継続的な収益源を持つ企業である。SRAホールディングス（3817）は、PER11.8倍、配当利回り3.94%という魅力的な投資指標を示しており、Ubuntu OSサポートサービスによる長期的な収益基盤を構築している13 6。同社のアドバンテックとの業務提携により、最長10年間のセキュリティ対応サービスは、継続的な収益源として高く評価できる6。

サイバートラスト（4498）は、国内唯一の企業向けLinuxディストリビューターとしての独占的地位を活用し、MIRACLE LINUXを通じて安定した事業基盤を構築している1。PER22.1倍という適正な評価水準にあり、組込み市場からクラウド環境まで幅広い領域での成長が期待される1 13。

成長性重視の投資機会

ぷらっとホーム（6836）は、IoT時代の到来とともにマイクロサーバー需要の拡大が予想される企業である15。PER440倍という高い評価は成長期企業の特徴を示しており、OpenBlocks®シリーズの累計14万台以上の販売実績と社会インフラ向けの長期サポート需要により、将来的な収益拡大が期待される7 15。

デージーネット（371A）は、2025年6月の新規上場により投資機会が提供される企業である4。オープンソースソフトウェアを活用したシステムインテグレーション事業は、Linux普及拡大の恩恵を直接受ける事業モデルであり、中小規模ながら高い成長ポテンシャルを持つ4。

大型株による分散投資

富士通（6702）は、Linux関連事業を包含する総合ITサービス企業として、安定した配当利回り0.89%とPER15.4倍という適正な評価を提供している13。同社への投資は、Linux市場の成長とともに、より広範なIT市場の恩恵を受ける分散投資効果が期待できる13。

結論

Linux関連企業への投資は、オープンソースソフトウェアの普及拡大、クラウドコンピューティングの成長、IoTデバイスの増加という複数の成長ドライバーに支えられた魅力的な投資テーマである。安定収益を求める投資家にはSRAホールディングスとサイバートラストを、成長性を重視する投資家にはぷらっとホームと新規上場のデージーネットを、分散投資を志向する投資家には富士通を推奨する。これらの企業は、それぞれ異なるリスク・リターンプロファイルを提供しており、投資家の投資方針に応じた選択が可能である。Linux市場の継続的な拡大を背景に、これらの企業は中長期的な投資価値を提供することが期待される。

出典